研究開発

多様な機能を持つ「SBL88乳酸菌」

SBL88乳酸菌とは

SBL88乳酸菌とは

SBL88乳酸菌は、サッポロビールが長年の研究において、ビールの品質管理や新商品開発のためにストックしていた約700株の微生物の中から見つけ出した大麦由来の乳酸菌で、正式名称をLactobacillus brevis (ラクトバチルス・ブレビス) SBC8803 といいます。2005年以来のさまざまな研究により健康に役立つ乳酸菌として活躍が期待されています。

睡眠の質を改善

睡眠の質を改善

日頃、睡眠の質に不満を感じている健常な日本人成人男女計220名に、SBL88乳酸菌入りチュアブル錠および不含のプラセボ錠をそれぞれ4週間継続摂取していただいたところ、SBL88乳酸菌入りチュアブル錠摂取により、起床時の眠気の自覚および疲労感が改善し、睡眠の質の向上が確認されました。

生活リズムの乱れやストレスが原因となって引き起こされる睡眠障害は、日中の疲労感や倦怠感などの症状のため、現代社会の大きな問題となっており、SBL88乳酸菌はこれに対する有効な機能を発揮することが期待されます。(雑誌「薬理と治療」2018年46巻10号に掲載)

※睡眠障害とは、睡眠に何らかの問題がある状態のことです。狭義には睡眠が障害されて眠れないことをいいますが、臨床では、不眠症、日中の過度の眠気、過眠症、睡眠呼吸異常症などの多岐にわたる項目(症状)が睡眠障害の診断基準となっています。

【他の機能紹介】多様な機能を持つSBL88乳酸菌

1.腸内のバランスを整える

1.腸内のバランスを整える

便秘がちな成人の男女にSBL88乳酸菌を2週間摂取してもらったところ、便秘症状の改善効果が期待できる結果が得られました。SBL88乳酸菌を摂取すると、腸内でのビフィズス菌の割合が増え、腸内のバランスを整える効果があると考えられます。

試験結果詳細(2010 Institute of Food Technologists Annual Meeting & Food Expo)

SBL88乳酸菌の便通改善効果

平成22年度の国民生活基礎調査(厚生労働省)では、男性で2.5%、女性で5%の方が便秘を感じていると報告されています。本研究では、植物性乳酸菌であるSBL88乳酸菌(学術名:Lactobacillus brevis SBC8803)を便秘に悩む方に摂取していただいたところ、便通改善とビフィズス菌の増加が確認されました。

1.ヒト試験の概要

排便回数が2週間で10回以下の方32名を2つのグループに分け、「二重盲検並行群間試験法」によりSBL88乳酸菌の効果確認試験を行いました。1つのグループ(16名)は、400億個のSBL88乳酸菌を含んだカプセルを1日1回摂取し、もう一方のグループ(16名)はプラセボを摂取しました。

2.便通の改善

事前に定めた条件に従って試験を行った29名の中で、SBL88乳酸菌を摂取したグループ(15名)は、摂取前と比較し有意に排便回数が増加しました。一方、プラセボ群(14名)では排便回数の有意な増加は認められませんでした。また、善玉細菌と言われている、ビフィズス菌の割合もSBL88乳酸菌を摂取したグループは、プラセボ群に比べ、有意に高い占有率を示しました。

3.SBL88乳酸菌による便通の改善メカニズム

SBL88乳酸菌に顕著なビフィズス菌増殖活性が認められたことから、ビフィズス菌を増加することで腸内環境を整え、便通改善効果を発揮すると考えられます。

4.まとめ

便秘に悩む方を対象としたヒト試験の結果から、SBL88乳酸菌が便通を改善することが明らかとなりました。近年、過敏性腸症候群(IBS)や炎症性腸疾患(IBD)といった腸に異常を抱える人が増加しています。腸内フローラの改善は便秘だけでなく、IBSやIBDの症状緩和にも寄与する可能性が考えられ、これらの症状における効果検証も期待されます。

※用語の説明

プラセボ食:
試験品の入っていないもので、形状・色調の区別がつかないもの。
二重盲検並行群間試験法:
二重盲検とは被験者の思い込みによる影響を排除するために、被験者にも医師にも、どちらが試験食かプラセボ食かを、わからないようにして進める試験のことをいう。今回の試験では、二重盲検条件下で、試験食(SBL88乳酸菌)とプラセボ食を摂取するグループに分け、試験を同時に進行させた。
IBS(過敏性腸症候群):
腹痛や腹部不快感をともなう下痢や便秘などの便通異常が慢性的にくり返される疾患。
IBD(炎症性腸疾患):
腸の粘膜に炎症や潰瘍を生じる原因不明の慢性疾患で、クローン病と潰瘍性大腸炎の2種類がある。

2.肝機能の指標を改善

2.肝機能の指標を改善

飲酒が習慣化している成人の男女に対して、SBL88乳酸菌を摂取してもらったところ、4週間後、飲酒によって増加するγ-GTPの測定値が下がっていることがわかりました(旭川医科大 高後教授との共同研究)。SBL88乳酸菌の摂取により、肝障害の緩和の効果が期待されます。

試験結果詳細(2010年7月 New Food Industry,52(7), 13-21)

SBL88乳酸菌の飲酒によるγ-GTP上昇抑制効果をヒト試験で検証

これまでに、SBL88乳酸菌(学術名:Lactobacillus brevis SBC8803)がマウスのアルコール性肝障害抑制作用を示すことを明らかにしてきました。さらに旭川医科大学の高後裕教授との共同研究を進めた結果、飲酒が習慣化している人において、SBL88乳酸菌にγ-GTP上昇抑制効果があることを明らかにしました。

1.ヒト試験の概要

飲酒が習慣化している人で、γ-GTPが高い(GOT(AST)、GPT(ALT)は正常)45名を2つのグループに分け、「二重盲検並行群間試験法」により行いました。1つのグループ(22名)は、SBL88乳酸菌を400億個含んだカプセルを1日1回摂取しながら、毎日飲酒(ビール中瓶2本程度)する生活を送り、もう一方のグループ(23名)はプラセボを摂取し、同様の飲酒生活を送りました。

2.γ-GTPの上昇抑制

SBL88乳酸菌を摂取しないグループは、1ヶ月後のγ-GTPが約10 IU/L上昇したのに対し、SBL88乳酸菌を摂取したグループは、逆に4 IU/L減少し(統計的に有意差有り)、かつ血清中の中性脂肪が有意に低下することが分かりました。

3.SBL88乳酸菌によるγ-GTP上昇抑制効果の推定メカニズム

通常、飲酒により脂肪酸合成の促進や、β酸化の抑制、NADH/NAD比の上昇、が起こり、中性脂肪の合成が高まります。この脂質代謝の異常に伴い、酸化ストレス(炎症の原因)が亢進すると考えられます。SBL88乳酸菌は脂質代謝を改善し、酸化ストレスを軽減することにより、γ-GTPの緩和に役立つと考えています。

4.まとめ

今回のヒト試験により、SBL88乳酸菌が日常飲酒者の脂質代謝ひいてはγ-GTPを改善することが明らかとなりました。γ-GTPが上昇すると、肝臓疾患、二型糖尿病、心血管疾患が増加することが疫学研究で報告されており、γ-GTPの上昇を抑制することは、上記疾患のリスクを低減することに繋がる可能性が考えられます。今後、SBL88乳酸菌が、上記のような疾患を予防し、健康な生活を維持することが可能か検討していきたいと考えています。

※用語の説明

γ-GTP:
肝臓の解毒作用に関係している酵素。アルコール摂取により誘導される。アルコール性肝障害が起きる前に、血清中性脂肪と共に上昇することが多いため、アルコール性肝障害の初期兆候を予測するために用いられる。γ-GTPの正常値は男性で50国際単位(IU)以下、女性で32国際単位(IU)以下。
AST:
アスパラギン酸アミノ基転移酵素。GOTとも呼ばれる。肝機能障害の程度を評価する目的で血清中のAST濃度測定が行われている。
ALT:
アラニントランスアミナーゼ。GPTとも呼ばれる。AST同様、肝機能障害の程度を評価する指標として用いられている。
二重盲検並行群間試験法:
二重盲検とは被験者の思い込みによる影響を排除するために、被験者にも医師にも、どちらが試験食かプラセボ食(試験品の入っていないもので、形状・色調の区別がつかないもの)かを、わからないようにして進める試験のことをいう。今回の試験では、二重盲検条件下で、試験食(SBL88乳酸菌)とプラセボ食を摂取するグループに分け、試験を同時に進行させた。
酸化ストレス:
生体は、活性酸素種による酸化反応(障害)と、それに対応する抗酸化反応を有する。両者のバランスが崩れ、障害に傾く状態を酸化ストレスという。酸化ストレス状況下では、生体の脂質やタンパク、遺伝子が酸化され損傷し、生体機能が損なわれ、生活習慣病やガンが引き起こりやすくなる。

3.免疫バランスを整える

3.免疫バランスを整える

アレルギー症状を示すマウス10匹にSBL88乳酸菌を摂取させたところ、8匹において、皮膚上の出血、浮腫、脱毛、乾燥、湿疹などのアレルギー症状が軽減されました。SBL88乳酸菌の摂取によって、免疫バランスが整い、アレルギー症状が軽減されたと考えられます。

試験結果詳細
(2008年5月 Biological and Pharmaceutical Bulletin Volume 31 Issue 5 Pages 884-889)

SBL88乳酸菌によるアレルギー症状改善機能を動物実験で実証(2007年)

サッポロビール(当時)では、信州大学農学部保井久子教授と共同で、SBL88乳酸菌がこれまでの乳酸菌よりも優れたアレルギー症状改善機能を有することを発見しました。その成果を動物実験で実証し、2007年7月11日第13回国際粘膜免疫学会で発表しました。乳酸菌のアレルギー症状改善機能の研究は、近年多くの食品メーカーが行っており、その効能に関する多数の有効な成果が発表されています。当社も長年ビール醸造と関わる乳酸菌で研究を続けており、2005年からは、アレルギー症状改善機能を有する乳酸菌の探索も開始しました。
乳酸菌は元々、ベルギーの白濁したビール「ホワイトビール」などを始め、ヨーロッパの一部でビールづくりに使用されていますが、世界的には、透明度の高いピルスナータイプが一般的であることから、多くのビールメーカーでは、ビールを混濁させる乳酸菌を、醸造工程中から排除する対象として研究を行ってきました。しかし今回の探索は、醸造過程で不要とされてきた乳酸菌に、隠された機能があるのではないかという当社独自の発想の転換から始められました。

同社は、低栄養、低pHだけでなく、アルコール成分が存在する等の過酷な環境において生存が可能な乳酸菌が、一般の乳酸菌に比べ極めて強い耐性を有している点に着目し、新規機能の探索研究を実施してきました。その結果、抗アレルギー機能のより強い乳酸菌である、SBL88乳酸菌を発見しました。そもそも大麦は乾燥に強い植物であり、そうした植物に付着する乳酸菌は通常のものより、環境ストレスに強いと考えられます。
動物実験では、アレルギー症状を有するマウス20匹を、SBL88乳酸菌を投与したグループと、投与しないグループの二つに分け、約3ヶ月間観察しました。効果は20日後から現れ、SBL88乳酸菌を投与した10匹中8匹のマウスにおいて、皮膚上の出血、浮腫、脱毛、乾燥、発疹などのアレルギーの症状が軽減されたことが実証されました。

4.肌の潤いを整える

4.肌の潤いを整える
*:摂取前と有意差(p<0.05)、**:同左(p<0.01)、#:群間で有意差(P<0.05)

SBL88乳酸菌を摂取させたマウスで、皮膚のバリア性を向上(経皮水分蒸散量を低減)させる効果が認められました。また、肌の乾燥が気になる成人男女に乳酸菌SBL88を摂取してもらったところ、日頃の乳酸菌含有食品摂取頻度が少ない方(週1回未満)が、SBL88乳酸菌を摂取した結果、首や目の下の皮膚水分量が有意に上昇することが確認されました。SBL88乳酸菌の摂取によって、乳酸菌含有食品摂取の少ない方には、皮膚の保湿向上やバリア機能が改善される可能性が期待できます。
(2016年11月 Experimental and Therapeutic Medicine Volume 12 Issue 6 3863-3872)

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